お風呂上がりの望遠鏡
加奈ちゃんが押領司クンの腕にぶら下がって戻ってきた。
「慣れてるのね」
「昔、妹がいたんですよ」
驚いた風で加奈ちゃんは押領司クンを見上げ、二人の会話に割って入った。
「いまは、いないの?」
「ううん、今もちゃんといるよ。でも、ずっと会ってないんだ。いろいろあってね、だから今はいっしょに住んでない」
押領司クンは言葉を選びながら、丁寧に答える。
もちろん、母親からの手紙を読んだ私には察しがついていたが、子供に理解できるような話じゃなかった。