お風呂上がりの望遠鏡
「加奈ちゃん、実はねぇ、おねえちゃんも加奈、なんだ」
私は立ったままの、加奈ちゃんの横にしゃがんだ。
身体中で加奈ちゃんのことを感じながら、目だけは下からゆっくり上ってくるゴンドラを追いかけていた。
押領司クンも向きを変え、加奈ちゃんの先に並ぶ。
「おおっ、ゴンドラが上ってきてる」
三人並んで、じっとゴンドラを見ていた。
「加奈ちゃん、これ。何か辛いことがあったら、電話して」
私は名刺を加奈ちゃんに渡した。
「加奈さん、あの、何か書くもん、持ってないですか」
押領司クンも私の名刺の裏に電話番号を書き込んだ、ふりがな付きの名前を添えて。
「ハイ、これ。辛いことがなくても、必ず電話して」
押領司クンは加奈ちゃんの手を取り名刺を包ませている。
「あれ、押領司クン。もしかして、ナンパしてるの?」
「もう、そんなんじゃないですよ」
いつの間にか、三人に笑顔が戻っていた。