お風呂上がりの望遠鏡
 
押領司クンは言い訳するように言葉を重ねる。

「母親には行方不明としか聞いてなくて・・」


押領司クンの言う「嫌な気分」の真意を計りかねていた私も、今の言葉でようやく時間が動き始めた。

「事件に巻き込まれたってことは、ないよね」

さっきは立ち入り過ぎのような気がして、聞けずに心の中で反すうしていた言葉。
意を決して口にする。

押領司クンはクビを横に振った。

「わからないんです。家出したのか、連れ去られたのかさえわからないんです」

「お母さんは何とおっしゃってたの」

「妹の手がかりを求めて、何年も会ってない父親のところまで尋ねてきた母親です。そのやつれた姿を見てたら、何も聞けませんでした」

「・・・」



「なんか、イヤだったんです。年齢以上に老け込んだ母親のことも、捜そうにも妹のことを何も知らない自分のことも」



 






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