お風呂上がりの望遠鏡
加奈ちゃんのお父さんは、私の横を回り込むように押領司クンのところに行き、手をテーブルの上に置いた。
突然のことに驚く私を制するように、押領司クンは目配せする。
加奈ちゃんのお父さんは、体重をテーブルの上に掛け、斜め上から押領司クンを見下ろした。
それに応えるように押領司クンはゆっくり振り向く。
「さっきは、どうも」
穏やかな押領司クンの言葉を全否定するように、加奈ちゃんのお父さんは早口でまくし立てた。
「加奈に変なことしてもらったら、困るじゃないですか」
押領司クンは視線をずらすことなく、じっと睨み返している。
口を堅く閉じ、何も言わない。
たまらず、加奈ちゃんのお父さんは視線を私に移した。