お風呂上がりの望遠鏡
展望台に向かって歩いていた。
「モンスターペアレントって本当にいたんだね」
私は加奈ちゃんのお父さんへの怒りを爆発させていた。
ふと気づくと、押領司クンの相づちが消えている。
急にどうしたの。なんか変なこと言った?
「加奈ちゃんが、お父さんに名刺を見せたんですよね」
私は押領司クンの横顔を見る。
「まあ、そういうこと、かな」
「どういう気持ちで見せたんですかね」
押領司クンの言いたいことはわかる。
加奈ちゃんはきっとお父さんに裏切られた感でいっぱいだろう。
でも、私たちにはどうすることもできない。
「押領司クン、飲みに行こ。今度は私がご馳走するから」
やるせない気持ちを吹き飛ばそうと提案した。
「でも、まだ真っ昼間なんですけど」
「そうだよね。どうする?それまで映画でも観る?」
「あの、まだ未成年なんですけど」
「えっ?」
「来月、二十歳になるんです」