お風呂上がりの望遠鏡
 
展望台に向かって歩いていた。

「モンスターペアレントって本当にいたんだね」

私は加奈ちゃんのお父さんへの怒りを爆発させていた。


ふと気づくと、押領司クンの相づちが消えている。

急にどうしたの。なんか変なこと言った?


「加奈ちゃんが、お父さんに名刺を見せたんですよね」

私は押領司クンの横顔を見る。

「まあ、そういうこと、かな」

「どういう気持ちで見せたんですかね」

押領司クンの言いたいことはわかる。

加奈ちゃんはきっとお父さんに裏切られた感でいっぱいだろう。

でも、私たちにはどうすることもできない。


「押領司クン、飲みに行こ。今度は私がご馳走するから」

やるせない気持ちを吹き飛ばそうと提案した。

「でも、まだ真っ昼間なんですけど」

「そうだよね。どうする?それまで映画でも観る?」


「あの、まだ未成年なんですけど」
「えっ?」

「来月、二十歳になるんです」

 
< 59 / 83 >

この作品をシェア

pagetop