お風呂上がりの望遠鏡
予定が狂った。
明日になったら、錠前屋さんに頼んでカギを開けてもらうつもりでいたのに。
まさか、小学校の先生だったなんて。
「今日だって、危なかったんじゃないの」
押領司クンを見つめる。
「いや、知らなかったんすよ」
押領司クンは視線をそれとなく加奈ちゃんに向けた。
この子はお父さんが家にいるとは考えなかったのかしら。
ん?反応がない。
加奈ちゃんの顔をのぞきこむ。
「お父さん、家にいないもん。ぜったい、いないもん」
放心状態の加奈ちゃんの口から言葉がもれ、その瞳からは一気に涙があふれ出た。
押領司クンと顔を見合わす。
この子ったら・・。
「ああ、泣かない。私が悪かった。だから、もう泣かない」
口先だけの私と違い、押領司クンは加奈ちゃんの隣りにぴったりくっついて座り、肘で加奈ちゃんの肘を軽く押した。
そして、見上げる加奈ちゃんの頭を大きな手でグリグリと撫でた。