甘く、淫らな恋情。
曲が終わった。
激しい動きのため、葉山さんもあたしも息が上がっている。
「「はぁ、はぁ…」」
重なる息遣い。
葉山さんがあたしの腰を引き寄せ、少しだけ密着度が上がる。
「もし山下さんが次のレッスンも来なかったら、木藤さん、残念ですが大会は諦めましょう」
「…はい」
そもそも、付け焼き刃で踊れるほど社交ダンスは甘くはない。
ここまで徹を待ってくれた葉山さんに、まずは感謝しなくちゃ。
すると。
「その代わり、私と踊って頂けませんか? 木藤さんと私、相性がいいと思うんですよ」
葉山さんが爽やかに微笑む。
その爽やかさとは反対に、あたしは一瞬で想像してしまった。
タンゴのように情熱的な夜を。