第三金曜日
そして突然「どう思う?」なんて話を振ってくるもんだから、何を言えるはずもなく。
ただ、おめでとうと静かな言葉を贈る。
「それだけ?」
「他に何があるのよ」
「……今更だけど俺はずっと世良が好きだったのかもしれない」
予告なくそんな爆弾発言をかまし私の顔をジッと覗き見る。
「世良もそういう感覚ない?」
善のその言葉が知り合ってからの五年間の記憶が蓋を開けた。
何度か恋心の様な気持ちを抱いたことがあった。
でもそれは自分だけで、気のせいかもしれない程度の気持ちで。
私達はいつもどちらかに相手がいたから。
発展も何もそれ以上考えることはなくて。
「俺達ってタイミングの問題だった気がしててさ。でもこうなりゃ自分でタイミング作るのも悪くないかなって。もしお前が俺を受け入れてくれるなら――、」
善が途中まで言いかけた言葉。
続きを聞く必要はなかった。
そっとカウンターの下で手を絡め取られ、トクトクと逸る鼓動が隣の彼に聞かれてしまいそう。
「男と別れられる?」
「………わかんない」
答えを知っていたかのように、だよなと一言。