欲しいものは、ひとつだけ。




タイチ君を置いて、あたしは書庫を奥に進む。

ここは、人も寄り付かないような書籍がたくさんある。

あたしはお昼休みに、彼――― ツヨシを呼んでいた。


「よっ」


「約束の本は?」


「あるよ、ほら」


紙袋が渡された。

この中に、あたしたちが課題で使えそうな本が入っているであろう。


「なぁ、サエ。 まだ、アイツと別れないのか?」


「まだ、無理」


タイチ君に気持ちが無いのは、あたしは彼――― ツヨシが好きだから。

ツヨシはあたしの5つ年上で、あたしの大学の司書でもある。


「なぁ、早く別れて」


そう言って、ツヨシがあたしに迫ってきた。




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