欲しいものは、ひとつだけ。




あたしが好きなのは、ツヨシなの。

ツヨシ以外なんて、いらない―――。


「サエ」


耳元であたしの名前を呼ぶその声に、体の力が抜けていくのを感じる。


「好きって言ってよ」


「無理、だよ……」


「昔はよく言ってくれたじゃん」


昔って…… あたしたちは家が近所で幼馴染ってだけだよ。

それに、昔言っていた好きと、今言う好きは。


「…… 意味が違うよ」


お兄ちゃんとして、昔は好きだった。

でも今は――― お兄ちゃんとしてなんて、見れない。


柔らかいツヨシのそれが、あたしの耳ををいじる。

ツヨシが触れる度、あたしの体は熱をあげ“もっと触れて―――”と叫ぶ。


「サエちゃーん」




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