トナリノヒト
「鍵は、いつもどこにしまったか忘れて」
え?
気づくと、
目の前に彼の端正な顔。
近く、
近くに。
そして私の掌は彼の掌と重なり、背もたれにしていた扉に押さえつけられていた。
触れそうで、
触れない、
重なりそうで、
重ならない。
互いの唇。
「おやすみ、また明日の朝」
そう、色香を感じる言葉を残して、
彼は自分の部屋へと消えた。
キスするかと、思った。
彼氏がいるのに。
キスをしたいと思った私は、
きっと、ヒドイ女。
でも、
明日朝は、
また鍵をゆっくりと閉める。
秘めた想いとともに、
鍵を奥底にしまい込んだ。