お兄ちゃん…キス、して?
こんな気持ち苦しいだけなのに…
なんで、
諦めきれないんだろう。
「……柚、あんた…」
「えっなに?」
夏希は眉を寄せてもの言いたげな視線を向けた後、はぁーと息を吐き「早くしないと予鈴なるよ」と、背を向け歩き出した。
…結局、何が言いたかったんだろ?
「ちょっと待ってよ!」
不思議に思いながらも、遅刻はしたくないので後に続いて私も教室に向かう。
今日の一限目は、数学だったっけ。
あの先生の授業分かりにくいんだよね〜…。
なんて、呑気な事を考えていた私は気づくことさえ出来なかった。
私の後ろ姿をじっと睨みつける
"彼"の冷たい視線に――……。