蠱惑的な熱視線
「え?」
「アイツが羨ましいよ。こんな素敵な彼女がいるなんてさ、妬けちゃうよね」
私がポカンと口を開けて間抜け面を晒している間も、変わらず彼はシャッターを切り続ける。
「でも、さ」
不意に、彼の声がワントーン低くなる。
「アイツは知らないよね。君が、こんないい顔するなんて、さ。疑いなく、今この瞬間、君は僕だけのものだと実感するよ」
カメラに彼の顔はほとんど隠されて、肝心の表情が全くと言っていいほどうかがえない。
──ねぇ、それは作品としての私に対する言葉? それとも私個人に対する言葉なの?
そんなわけない、あるわけないと頭で否定しながらも、顔が羞恥に赤く染まっていく。