気づかないふり…
「これ映画のチケット。今晩のだけど、彼氏と行けば? ホントは彼女と行こうと思ってたんだけど、いきなりドタキャンでさ」


少し不貞腐れガッカリした顔に、何故か胸が痛んだ。
その理由が分からないまま、彼氏に電話を入れる。


「ごめん。今晩は残業」


そっけない言葉に「仕事頑張って」と電話を切った。
でも特に、胸は痛まない。


「じゃあ振られたもの同士で行くかっ」


いつもなら手が触れるくらいどうってことないのに、ギュっと握られた手から大地の熱が伝わって、胸をドキドキさせた。


「行くっ!!」


透かさず答えると、大地の眩しい笑顔。胸がキュンと疼く。
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