気づかないふり…
ナイトショーの時間が近づくと、ポップコーンとコーラを買って館内に入る。
指定席に行くと、そこはカップルシート。
ラブラブなカップルには最適だけど、今の私には……
「奮発したんだから、有り難く座れよ」
最初は私のために用意したシートじゃないのに、偉そうな大地に可笑しくなってしまう。
「はいはい。大地ありがとね」
繋ぐ手に力を込めた。
「それヤバい……」
その言葉と同時に、館内が暗くなる。
「どうして今まで気づかなかったんだろう。てか、気づかないふりしてただけか……」
ふっと笑い声が聞こえたかと思うと、唇に暖かいものが触れた。
「美咲ごめん。止めらんない……」
声から切なさと情熱を感じると、私もその唇に貪りついた。
私も止めれそうにないよ、大地……
2時間弱の映画のストーリーは───
ほとんど覚えていない。