狐さんに取り憑かれました2【短編】
『私は、どんなに嬉しくてもなかなか笑えないのです』
キョトンとする少年に話を続ける。
『最近は、少し笑えるようになってきたのですが……。嬉しくても笑えないのです……難しいですかね』
長年笑わなかった者が、急に笑うことは不可能なのだ。
いつものことなのに、その事実が深く胸に突き刺さった。
「……!!」
何かを思いついたかのように、目を輝かせた少年の小さな手が、私の口元に触れた。