ポケットに婚約指輪

 招待状が届いてから、私は必死だった。

エステに行き、肌のお手入れもしっかりした。
体重だって三キロ落とした。

痩せた体を綺麗に見せるワンピースを買い、ジュエリーを買い、髪には自然な程度の緩いパーマをあて、今までの人生で一番綺麗な私を作り上げた。

それはもちろん、彼を見返すため。
こんな綺麗な女を振ったと、後悔させてやるため。

それくらいの反撃、許されると思った。



 だけど。

 実際にその披露宴に出席して、後悔したのは私の方だった。

江里子はひな壇でウエディングドレスに身を包み、それは幸せそうに微笑んでいた。

内から湧き出る幸せというものは、隠しておいても出てくるのだろう。

それは、取り繕った今の自分には到底出せない空気で、私をとてもみじめにさせた。


 存在さえしていない“ずっと付き合っていた結婚間近の彼”の話をひたすらにしながら、時間が過ぎるのを今か今かと待っていた。

そう、感じたのはただの敗北感。

幸せそうな装いで塗り固めたって、本物の幸せにはかないっこない。


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