ポケットに婚約指輪
「俺だけに綺麗な菫を見せてよ」
耳元で囁かれると、さざ波に似た快感が全身を伝っていく。
「違うんです。これをつけたのはただ」
「ただ?」
「その、……あまりにも素敵だったので」
「そう。気に入ってくれて嬉しいよ」
ふと、視界に影が差した。
それは舞波さんがかがんだからで。
気をとられているうちに唇が塞がれる。
「……ふっ、むっ」
声を出すこともままならない。
彼の唇は噛み付くような調子で私の唇を塞ぎ、彼の舌が下唇をなぞった後、歯列をなぞる。
そして自由に私の口内を犯し始める。
深く激しいキスに力が抜けてきて私は膝から崩れそうになった。
それを支えるように舞波さんは私を抱きしめた。唇を塞いだまま。