ポケットに婚約指輪
「久しぶり。江里子、全然焼けてないね。舞波さんが凄く焼けてたから、江里子も真っ黒かなぁって思ってた」
「いやだ。日焼け対策はばっちりしたもん。彼はそういうの無頓着だからね。まあ、そういうところが男っぽくて素敵なんだけど」
「やだ、早速のろけるのやめてよ江里子。ほら行こう、店混みだしちゃうよ。菫早く」
「うん」
あんな会話聞かなかったら、もっと素直に江里子との再会を喜べたのに。
そういえば、時計もはずし忘れてる。
会社から数分のところにあるコーヒー店。
軽い軽食も出るので、女同士でのランチでは良くここを使う。
ちょうど混みだしたところだったけれど、何とか最後の一テーブルに食い込むことが出来、私たちは胸を撫で下ろしながらランチメニューからそれぞれ頼んだ。
「フランスだっけ?」
「うん。美術館とか見てきたー。すっごく素敵よ? 皆も新婚旅行行く時はヨーロッパお勧め」
「えー。あたしも早くプロポーズされたいなぁ。一人結婚すると焦るよー」
江里子と久実が楽しそうに話すのを見ながら、私はどう会話に入っていいか分からない。