ポケットに婚約指輪
会議室の一室で、二人で帳簿を照らし合わせ確認していく。
うちの会社では、金銭関係の帳簿はチェックを兼ねて二人ですることになっている。
刈谷先輩は数字には強いので、会計処理関係の仕事はよく任されているようだ。
「うん、いいかな。……お疲れ、菫。ちょっと休憩しましょうか」
「ええ。コーヒーでも入れてきましょうか」
「そうね。お願い」
会議室を出て給湯室の方へ向かうと、人総の入り口でキョロキョロとしている里中さんを見つけた。
彼は先に私に気づくと、緩く微笑んでくれた。
つられて自分も口元が綻ぶのが分かる。
「やあ、塚本さん」
「お疲れ様です、里中さん」
「人事部長いる?」
「部長ですか? えっと、昼から会議に出ていて……」