ポケットに婚約指輪
「あの、お手伝いって」
「郵送資料を作るのを手伝って欲しいんだ。そこの資料を一部ずつ封筒に入れて、宛名ラベルを貼る。……分かるよね?」
「はい」
良かった。本当に仕事の用件だったんだ。
少し安心して早速仕事に取り掛かる。
やっているのは単純作業で、私が封筒に入れるところまでやり、舞波さんが封をしてラベルを貼る。
ただ、渡す時に時折手が触れる。
いちいちそんなことに反応したくないのに、心臓が騒ぐ。
それがドキリなのかギクリなのか、自分でも判別できないほどあやふやだ。
かかった時間は40分ほど。
意外と量があったので大変だった。
「ありがとう。助かったよ。ちょっと休憩しようか、おごるよ」
「良いですよ、そんな」
「いいから」