ポケットに婚約指輪

放心状態


 私は裸のまましばらくベッドに横になっていた。

舞波さんから投げつけられた言葉は、痛くて苦しい、酷いものばかりだ。
だけど一番辛いのは、それがどれも事実だったということだ。

最初に相手のいる人間に恋をしたのも、間違いなく私で。
いつも簡単に流されてしまうのも、私だ。

今日だって、もしあの電話が無かったら最後までいってた。

そしてそんな私じゃないと、舞波さんは好きになってくれないんだ。

意志が弱くて、流されやすくて、目立たない地味な女。
人の言うことに黙って頷けるのだけが唯一の価値。


そんな私に、誰が恋をするっていうの。


だから、里中さんのあの言葉だってきっと気まぐれだ。

一度そう思い始めると、自分がどんどん嫌になってくる。

誰に見られているわけでもないけど、ただ部屋の中に裸体でいることが厭らしい気がして、シャワーに向かった。

熱めのシャワーを頭からかぶって、彼に触れられたすべてを洗い流す。
洗っても洗っても体が綺麗になったとは思えず、気がついたら肌が赤くなっていた。

「……っ」


もはや何に悔しいのかも分からずに、ただ涙だけをこぼした。

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