ポケットに婚約指輪
パジャマを着込んで、玄関先の散らばった荷物を片付ける。
買ってきた夕食も食べる気がせず、そのまま冷蔵庫に押し込んだ。
そうして携帯を見る。
どうやらシャワーを浴びている間にメールが来ていたようだ。
【時間のある時電話して】
里中さんからのメールだ。
嬉しいのに、行動をためらう自分もいる。
このまま深入りして、里中さんに嫌われたらもう立ち直れない。
だけど今日の話も気になってはいる。
刈谷先輩とはどうなったの?
舞波さんとの事、ばらされてない?
悩んで悩んで、結局電話をすることにした。
気になることがたくさんあることも事実だけど、一番は声が聞きたかった。
舞波さんの罵声を、今日一番最後の声にしたくなかった。
かけなおした電話は、三コールで繋がる。
「あの、もしもし」
「やあ。何してた?」
恐る恐るかけた電話に、穏やかな返事。
まだ嫌われていなかったと、安堵が私を包み込む。