ポケットに婚約指輪
変わるということ
*
月曜の朝、私は少し明るめのインナーにいつものジャケットを羽織った。
お化粧も、いつもより時間をかける。
いきなり変身は出来ないけど、少しずつでも前向きになれるように、自信をもてるように。
カバンには彼がくれたあの指輪を入れていく。
つけることは出来ないけれど、これを強くなるためのお守りにしよう。
私の為に買われたものではないけど、彼から貰ったものには変わりない。
出掛けにケースからその輝きを見る。
彼を思い出して元気がでるのと同時に、それを受け取るはずだった人のことを考えてしまって胸がモヤモヤした。
つい先日まで、それ程深い意味を持たなかった指輪が、私の中で嫉妬の対象になっていることに驚いた。
会社の最寄り駅から歩いていると、背中を叩かれる。
「おはよ、菫」
「……刈谷先輩っ」
思わず身構えてしまった。
何か違和感でも感じたのか、刈谷先輩はまじまじと私を見る。
「なあに、なんかお洒落してない? いいことでもあった?」
「あ、はい。いや、あの、ないです」
「そう。私もね、色々あったのよ」
「お休みされてたのは体調不良で?」
「心の不調ね、どっちかというと」
大きなため息を一つ落とす。
やっぱり、里中さんに振られたのが堪えているのだろうか。
月曜の朝、私は少し明るめのインナーにいつものジャケットを羽織った。
お化粧も、いつもより時間をかける。
いきなり変身は出来ないけど、少しずつでも前向きになれるように、自信をもてるように。
カバンには彼がくれたあの指輪を入れていく。
つけることは出来ないけれど、これを強くなるためのお守りにしよう。
私の為に買われたものではないけど、彼から貰ったものには変わりない。
出掛けにケースからその輝きを見る。
彼を思い出して元気がでるのと同時に、それを受け取るはずだった人のことを考えてしまって胸がモヤモヤした。
つい先日まで、それ程深い意味を持たなかった指輪が、私の中で嫉妬の対象になっていることに驚いた。
会社の最寄り駅から歩いていると、背中を叩かれる。
「おはよ、菫」
「……刈谷先輩っ」
思わず身構えてしまった。
何か違和感でも感じたのか、刈谷先輩はまじまじと私を見る。
「なあに、なんかお洒落してない? いいことでもあった?」
「あ、はい。いや、あの、ないです」
「そう。私もね、色々あったのよ」
「お休みされてたのは体調不良で?」
「心の不調ね、どっちかというと」
大きなため息を一つ落とす。
やっぱり、里中さんに振られたのが堪えているのだろうか。