ポケットに婚約指輪

 そんな風に一ヶ月あまりを過ごして、今は10月。
巷には秋の空気を含む風が吹き始めていた。


「今日は助かったよ。キミ、最近、なんか垢抜けたんじゃないか」


今日は部長のお手伝い。

部長が会議で使うパソコンとプロジェクターの操作だ。
そんなに難しい仕事ではないけれど、以前の私ならば絶対に回されなかった仕事だ。


「そうですか?」

「笑っているから印象がいい。いい出会いでも会ったのか?」

「……そうですね」

「大事にするといい」


不思議と自分が心を開いていくことで、周りの人も優しくなった気がする。

人に認められるって嬉しいことだったんだ。
もっと頑張ろうって思える。


里中さん。
変わるってこういうこと?

こうやって自分から笑顔を出せるようにならなきゃダメだったの?


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