ポケットに婚約指輪


「二人きりで仕事してんの?」

「内定者への講習がメインです。打ち合わせなんかは二人でしますけど」

「他の男と二人きりになるなら、報告くらいは欲しいな」


視界が司さんで一杯になるほど近づかれて、顔が一気に赤くなる。


「し、仕事ですよ」

「仕事でもね」


どんどん近づいてくる彼の顔。ドキドキして心臓が爆発しそう。
どうして、何で急にこんな強引になるの?

硬く目を瞑った私の唇に、ふっと空気があたった。
かと思うと柔らかい感触が頬に触れる。

目を開けると、にやりと笑った司さんが私を見ている。


「キスされると思った?」

「や、だって」


あんなに近づかれたら誰だってそう思います。


「流石にもうちょっと雰囲気いいとこ選ぶよ。さ、13時過ぎてる。行こう」

「引っ張り込んだの司さんじゃないですか」

「主張するとこはしとかないとね。俺は結構所有欲は強い方だから」


さらりと言い放つ彼に、ものすごくドキドキしている。

所有されてるのは、私ですか。
私はちゃんとあなたのものなんですか。



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