ポケットに婚約指輪


「私なんかが司さんの彼女だったら、司さんのイメージが悪くなります」

『誰がそんなこと言うんだよ。最近部長からも評判いいんでしょ?』

「……でも、私なんて」


司さんの言葉がまっすぐであればあるほど、秘密を抱える自分が汚く思えて。
だけど、泣くのはもっとずるい。唇をかみ締めて、ただ押し黙るのが精一杯だ。


『なんて、は禁句。何度も言うと怒るよ』


怒ったような口調は、余計本気で私を心配してくれてるように思えて、心臓がぎゅっと掴まれたように苦しい。


「……司さん」

『俺のこと好き?』


直球で聞かれて、息が止まりそうになる。

好きに決まってる。
ただ、あなたにふさわしい女になれない自分が情けないだけ。


「……き、です」

『聞こえない』

「好き、です」

『じゃあ俺のこと信じなよ。菫は可愛い。俺が選んだ女のこと、悪く言うなよ』


目の周りが熱い。
どうしてそんな風に言ってくれるの。
堪えている涙が決壊しそう。

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