ポケットに婚約指輪
「な、何を言えば」
『俺のこと、どう思ってる?』
「す、好きです」
『うん。それ。……何度も言って』
甘さを含んだ彼の懇願に、私は恥ずかしさで溶けそうになる。
「好きです」
『俺も好きだよ』
「し、信じて?」
『……信じるよ?』
「ホントに大好きです」
最後の方は、ついに涙声になってしまった。
これ以上どう好きになればいいのか分からないほど、彼のことが好きになってしまった。
どうやったら彼にふさわしい私になれるの。
一度汚してしまった過去は戻せないの?
「菫、どうかした?」
「なんでもないです。また明日」
潤んだ声の理由を追求されたくなくて、慌てて話をまとめて電話を切った。