ポケットに婚約指輪

 路地の一角にある石畳の壁のお店。前に来た時はちゃんと見ていなかったけれど、確かに看板には【Blue Bird】と書かれている。


「いらっしゃいませー」


扉が開くと同時にかけられる出迎えの言葉も一緒。
今日はそこまで混んでいないのか、すぐにエプロン姿の美亜さんがやってくる。


「あら、……あれ、あなた」

「お久しぶりです」


ぺこりと頭を下げてから顔を上げると、優しい笑顔が迎えてくれた。


「待ち合わせ?」

「はい、里中さんと」

「まだ来てないわね。先にお席にご案内します」


促されてレジ前を通る時、青い鳥の置物が見えた。
そうか、ここは幸せの青い鳥のお店だったんだ。

 美亜さんは私を席まで案内すると、手早くお冷とお絞り、そしてメニューを持ってきた。


「ありがとうございます」

「いいえ。なんか雰囲気が変わって、別人みたいね」

「そうですか?」


一度しか会ったことない人でも感じるくらい私は変わったのかしら。


「うん。なんか。……予想外な変わり方」

「え?」


 美亜さんが眉を寄せるのでなんだか心配になる。

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