ポケットに婚約指輪

「私変ですか?」

「やだ。そんなことあるわけ無いじゃない。とっても綺麗で社交的な感じになったわ」

「……そうですか」


ホッとして目をふせたものの、彼女がポツリと言った言葉に心臓が凍りつきそうになる。


「ただ、……里中さんの好みのタイプとは違うかなって」

「え?」

「でもお付き合いしてるのよね?」

「は……」


はい、と言えなかった。
なんで私、動揺してる?


「ごめんなさいね。変な事言っちゃった」

「いえあの、……どうしてそう思うんですか? 里中さんの好みのタイプと違うって」

「なんとなくよ。ほら、あなたが前に来た時、雰囲気が似た人が来たなって思ったの。だからあなたの方かなって思ったんだけど」


“雰囲気が似た人”

それは誰に?
考えて思いつくのは司さんの元婚約者だ。


「まあでも、人の好みなんて変わるものね。ホントごめんなさい。私ってば余計なこと言って」

「いえ、あの」

「ご注文が決まったらお呼びくださいね」

美亜さんが顔を上げた途端、入り口の辺りで音がした。


「……あ、いらっしゃいませ」


つられるように、私も入り口の方を見ると、息を切らした里中さんがキョロキョロと辺りを見回していた。

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