ポケットに婚約指輪
「気になる?」
「私って、あなたの彼女でいいんでしょうか」
司さんが動きを止めて眉を寄せる。昼間見たような表情に一瞬身がすくんだ。
「……どういう意味?」
「だって、分からなくて。私のどこが好きですか? あなたに気に入ってもらえる部分が自分にあるなんて思えない。もしかして、……単に元婚約者さんに似てるだけだったりとかするのかなって」
だったら。
彼が私を気に入った訳も理解できる。
私に元婚約者を重ねていたのなら。
司さんはじっと私を見つめたまま、額の髪をかき上げた。
「似た部分がないとは言わないけどね。元々依存されるのが好きなんだ、俺は。独占欲も強いしね」
「依存……ですか」
「そう、菫みたいに見つめてくる子には弱い」
私はそんなに情けない顔で彼を見ているのだろうか。
でも確かに、前は彼が助けてくれないと駄目な自分だった。
じゃあ今は?
少なくとも今は前より自分で決断できる。刈谷先輩にもちゃんと言いたいことが言えるようになった。
明らかに前とは違う私になってる。
それでも、好きでいてくれる?