ポケットに婚約指輪
番外編
独占欲と赤い花
それを言ったらきっと怒るだろう。そう思って、グズグズしていた私も悪い。
今日は木曜日。司さんが直帰できるというので、私のアパートに来てもらうことにした。
私は終業ベルとともに会社を出て、買い物をして近来稀にみるほど手の込んだ手料理を作った。彼に、喜んで欲しくて。そして褒めて欲しくて。
そして仕事を終えて部屋に来た彼は、私の望み以上に手料理を褒めてくれた。嬉しく嬉しくて、それだけに機嫌を損ねるような話はどんどん後回しになってしまった。
彼がシャワーを浴びて、私が交代で入る間にビールを出しておいたのも、ほろ酔いだったらさらっと流してくれるかも、っていう期待をこめていたからだ。
だけどそんな期待も虚しく、それを告げた途端、司さんの表情は固く凍りついた。
「却下」
「でも、あのね。司さん」
「なんで菫が合コンに行かなきゃいけないんだよ」
「だからそれは」
「聞くから。ちゃんと話して」
不機嫌そうな表情は隠しもしない。だけど私の話をすべて拒絶することもない。
彼は私のベッドに背中を預けて、責めるような視線を私の方へと向けた。