ポケットに婚約指輪
偽物と本物
その後、私はコソコソと自分の部署に戻る。
すると、ばっちりメイクを直した風体の刈谷先輩がこちらを見た。
「あら、菫どこに行ってたの?」
「ちょっと一階のコンビニまで」
「何も買ってこなかったの?」
「あ、あは。なんかいいのが無くて」
どうして女同士はこんなに詮索好きなのだろう。
どうでもいいと思う。
同僚が昼休みにどこに行こうが勝手でしょう?
「コンビニ行くなら声かけてよね。私、新製品探しとか好きだから」
「そうですね。次回はそうします」
曖昧に答えてデスクに戻る。
メールをチェックすると、一通新着があった。
【件名:お疲れ様です】
いかにも仕事のようなメールではあったが、アドレスがおかしい。
このアドレスは知ってる。知り尽くしてる。
彼の。……舞波さんの携帯電話のアドレスだ。