ポケットに婚約指輪
自意識過剰
私がデスクに戻ると、ディスプレイの脇には小さなメモがあった。
【明日19:00 1Fロビーに集合 刈谷】
もう話をつけたのか。
その手腕たるや凄まじい。
呆れるのと同時にやはり尊敬もする。
少なくともうじうじ悩んでいる私よりも、行動派の刈谷先輩は何かしらの結果をもたらすのは事実だ。
「でも。……どうしよう」
ただでさえ、私と里中さんはお互い人に知られたくないことに関して繋がってしまったのに。
刈谷先輩のいる前で何を話せば良いと言うのだろう。
私を使えば里中さんとパイプがもてると知った刈谷先輩は、その日一日中私に親切だった。
だけどそれは逆に居心地が悪くて。
特に残業するほどの案件も無かったため、早々に会社を出ることにした。