ポケットに婚約指輪
関係は4ヶ月ほど続いた。
毎回のように、私は江里子の愚痴を聞かされて、彼を癒すために抱かれる。
「菫みたいな女は、いい奥さんになるよな」
そんな甘い言葉を、約束みたいに思ってた。
いつか私を選んでくれる。
そもそも江里子はお嬢様でワガママだ。
彼もそんな彼女には辟易してるに違いない。
きっといつか、江里子とは別れるに決まってる。
……だけど、それは私の勘違い。
将来を考えれば、彼が江里子と別れるわけがなかったし、この関係をばらす勇気が私にないことも知っていたのだろうと思う。
「結婚するんだ」
当たり前のことのように告げられて、最初は言葉が出せなかった。
「……そう」
「だから、終わりにしないと」
彼の勝手な言葉に、泣き喚けばよかったんだろうか。
だけど、知ってて関係を始めてしまった自分には、そんな資格はないように思えて。