ポケットに婚約指輪
二人が出て行って、お水を頂きながらため息をつく。
すると美亜さんが隣に座った。
「大丈夫ですか?」
「はい。すいません。ご迷惑かけて」
「いいのよ。里中さんが連れてくる女の子って見てみたかったの」
「え?」
「うちの店、本当は少人数では予約受け付けないのよ。なのにランチタイムにわざわざ頼みに来て。これは誰か特別な人をつれてくるのかと思って楽しみにしてたの。まさか両手に花で来るとは思わなかったけど。なんとなく、あなたの方なのかなーって」
美亜さんは、夢見るように笑う。
そんなこと言われたら、顔が真っ赤になる。
違う。里中さんにそこまでの意図なんかない。
だって、忘れられない婚約者だっていたわけだし、私なんて知り合ったばかりだし。
「これで少し落ち着くといいけどね」
「え?」
「すいませーん」
意味深な言葉の続きをもっと聞きたかったのに、美亜さんは他のお客様に呼ばれて行ってしまった。