ポケットに婚約指輪
 それから二ヶ月後。
私の元に一通の招待状が届く。

引きちぎりたい欲求に駆られながらも、御出席の「御」の字を斜線で消し丸をつけ、脇に小さくしたためる。


『おめでとうございます。どうかお幸せに』


意地でそう書いて、電話の脇にポンと置いておく。

だけど、そのハガキはものすごく存在感があり、
ふと目に入ってただけで彼の幸せそうな顔がちらついて堪らない。


私はそのまますぐコンビニの前にあるポストに投函した。

すぐにでも、手放してしまいたかった。


悔しさのぶつけどころが分からずに、ハガキを飲みこんだポストの上をゴンと叩く。


ごめんね。
赤い顔のあなたは何にも悪くないんだけど。


拳はヒリヒリと痺れるように痛い。
でも、胸の痛みの方が苦しい。

やってしまった途端に後悔してる。

やっぱりこんなハガキださない方が良かった。
何か理由をつけて欠席にしてしまえばよかった。

たった今の行動を無かった事にしたい。


――――でも。


込み上げて来そうな涙を、無理やりに飲み込んだ。




私にだって

プライドくらいあるのよ。

< 7 / 258 >

この作品をシェア

pagetop