ポケットに婚約指輪
「私はちゃんと好きでした。……でも、好きになっちゃいけない相手だったんです」
言い切ると、じわりと涙が浮かぶ。
嫌だ。どうしてこんな醜態をさらす羽目になるの。
「へぇ? やっぱり浮気だ」
「……そうです。私が浮気相手で。……駄目だって分かってたのにやめられなかったんです」
「そして簡単に切り捨てられた? だから見返したいだったの?」
「……はい」
結局、相手が誰かということ以外は、すべて話してしまった。
今まで誰にも話せなかった秘密。
舞波さんと私だけの秘め事。
もう私たちだけのものじゃなくなってしまった。