ポケットに婚約指輪
私が彼の立場なら、きっと納得できない。
だって、2年間幸せに付き合っていけたなら、多分これから先だってそうできる。
多少の心の揺れなんて、一瞬の気の迷いのはず。
そう思って、ちらついたのは江里子と舞波さんの関係。
「……っ」
ああそうか。
だから舞波さんは私を選ばなかった?
多少の波風は立っても、江里子とは2年ほど付き合っていたはずだ。
私の存在は気の迷いでしかなくて、それ以上の存在にはなれなかった。
日常を打ち破るほどの力で彼に愛してもらえなかった。
だから。
視界の中の里中さんが滲む。
ああ、またこんな変な顔を見せてしまうなんて。
「……どうして君が泣くの?」
「す、すいません」
「同情してる?」
「違います。これは、……自分が悲しくて泣けてるだけです」
「俺の話しててなんで君が悲しくなるの」
「なんででしょう。すいません」
「……面白いよね、塚本さんって結構」
里中さんが笑った。
それになんか救われた気分になりながら、私はボロボロと流れる自分の涙を拭いた。