ポケットに婚約指輪
「いつか、別れてくれるって思ってたんです。や、本当は分からない。どこかで諦めてもいました。彼は私を選ばないって。だけどもしかしたらって希望も消せなかった」
「うん」
「私といると癒されるって言ったんです。私はそれを信じてた。だけど。……だけど、彼は他の人と結婚した。
それが気持ちに嘘がつけなかった結果だとしたら、私の存在はなんだったんだろうって思って」
しゃくり声で言う。自分でも何を言ってるのか良く分からない。
支離滅裂だ。言ってることもやってることも。
「……随分悪い男に引っかかったんだねぇ」
「ち、がう。私だって、知ってて付き合ったんです。彼の彼女がいること」
しかも、その相手は私の友達だって。
「じゃあ。塚本さんも悪い女だったんだね」
身も蓋もないことを言われて、言葉が告げなくなる。
そしたら、里中さんはにっこり笑った。