ポケットに婚約指輪
「出かけるのは週末じゃなかったんですか」
「今から行くのは食事じゃん。どうせ塚本さんだって食べなきゃいけないんだから一緒でしょ。お金の事なら、今日はおごってあげるよ」
「大丈夫です。割り勘にしてください」
物理的な面でまで弱いなんて思われたくないという意識が、私にそう言わせた。
だけど、里中さんは怪訝そうな表情を見せる。
「……何ですか?」
「いや? あんまり俺の周りにはおごるよって言って断る女の子は居なかったなぁと思って」
思って?
だから何?
生意気だと思った?
それとも不思議だと思った?
それとも……。
「じゃあ、今日は割り勘ね。週末もあるしね。食事しながら予定決めようよ」
サラリと流されてほっとしたような残念なような。
私はどんな言葉が欲しかったんだろう、それもよく分からない。