ポケットに婚約指輪

 日曜の約束は14時半から。
なのに、朝も早くから私はクローゼットとにらめっこしている。

ただのリハビリデートなんだから、なんて言い聞かせてはみるけど、実際私は里中さんとの外出に心が浮き立ってる。

だってあれだけ格好良くて、スマートで優しくて、たまに意地悪な時もあるけど一緒にいるとなんだか楽しい。

こんな男の人と一緒にいられるってのはやっぱり嬉しいもの。


とはいえ、付き合ってる訳じゃないんだし、あんまり気合入れすぎるのも変だ。

誰かに見つかるような派手な格好もNG。

スーツ……じゃ仕事みたいだし、もう少し砕けた格好で何かないかな。


悩みだすと止まらない。

気がついたらお昼を過ぎてて、慌てて手近にあったパンを口に入れ、外出の準備をする。

結局無難そうなグレーのブラウスにラインがキレイなスカートにした。
最近夜は寒いからカーディガンも一枚持っていく。


出掛けに口紅のチェックをする。

うん。キレイに塗れてる。

舞波さんの結婚式の時の無理やりに作り上げた美しさよりは、今日の自分の方が好きだと思う。

何より、単純にキレイな自分になりたいって思えたことが嬉しかった。


< 91 / 258 >

この作品をシェア

pagetop