ポケットに婚約指輪


 週明け、出社すると一番に目に飛び込んでくるのは、少し日焼けした肌にいつものスーツを着込んだ舞波さんだ。
同じ職場で、彼のことを考えないで過ごすことなど土台無理な話なのだ。


「やあ、塚本さん。結婚式に来てくれてありがとう。これお土産」

「あ、……ありがとうございます」

「早くしまって? 君のは特別だから」


最後のセリフは、耳元で囁かれる。
激しくなってる心臓は、動揺しているせいなのか、嬉しいからなのか分からない。


「新婚旅行はいかがでしたか?」


カバンにお土産をしまいながら、世間話のつもりでそう続ける。


「うん。良かったよ。ただ俺は日本の方が好きかな」

「そうですか」

「不在の間の引継ぎをしようか。10時から会議室とったから」

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