ポケットに婚約指輪
*
10時少し前に指定された会議室に入ると、誰も来ていなかった。
「あれ?」
おかしいな。皆でって言ったのに。
忙しいから、なかなか集まらないのかしら。
刈谷先輩は役所に書類を取りに出てるし、部長も別の会議に出ていたし。
終わるのが遅れているのかしら。
「お待たせ」
会議室の扉が開き、パタンと閉じる音がした。
「舞波さん。皆は?」
「さっきちょっと話したら大体分かったから。塚本さんにだけなんだ。まだ聞けてないの」
舞波さんが、プライベートの顔を見せてにやりと笑う。
さっと血が引くような感覚が半分、懐かしさ半分。
動揺してる自分の感情がどっちを向いているのかは分からない。
「でも私はそんなに」
あなたの仕事は受け持ってないですけど。
口をパクパクさせる私を、舞波さんは楽しそうに見る。
一歩近づいてくる彼に、私は身じろぎをした。
そうしたら笑いながらもっと近づいてくる。
10時少し前に指定された会議室に入ると、誰も来ていなかった。
「あれ?」
おかしいな。皆でって言ったのに。
忙しいから、なかなか集まらないのかしら。
刈谷先輩は役所に書類を取りに出てるし、部長も別の会議に出ていたし。
終わるのが遅れているのかしら。
「お待たせ」
会議室の扉が開き、パタンと閉じる音がした。
「舞波さん。皆は?」
「さっきちょっと話したら大体分かったから。塚本さんにだけなんだ。まだ聞けてないの」
舞波さんが、プライベートの顔を見せてにやりと笑う。
さっと血が引くような感覚が半分、懐かしさ半分。
動揺してる自分の感情がどっちを向いているのかは分からない。
「でも私はそんなに」
あなたの仕事は受け持ってないですけど。
口をパクパクさせる私を、舞波さんは楽しそうに見る。
一歩近づいてくる彼に、私は身じろぎをした。
そうしたら笑いながらもっと近づいてくる。