好きと言えるその日まで
 そんな私に、意外にも転機が訪れたのは……最悪の状況だった。


 「はぁああああっ!?」

 「お前な。俺が叫びたいわ」


 ガックリと肩を落としながらそう言う担任。


 私はそんな担任を無視して、渡された用紙を凝視した。


 『追試のお知らせ』


 何度読み返してもタイトルがそう銘打ってある。


 目をこすりたい衝動に駆られながらも、私は無駄な足掻きを止めてその用紙を半分に折った。


 「葛西。担任の教えてる教科くらい頑張ってくれや」

 「先生の教え方が悪いんでしょ」

 「……オイ」

 「……じゃ、失礼しますっ」


 先生の額に青筋が走ったのを見て、私は言い逃げすべく教科担当室を出た。


 だってさ?

 
 数学が分かんなくたって生きれるじゃない!?


 私だって頑張ってみたけど、分かんなかったんだもん。


 仕方ないでしょ。
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