好きと言えるその日まで
 「なぁ、そろそろそこ退いてもらえる?」


 最後の設問を見ていたところで、私の頭上に声が降ってきた。


 「へっ?」

 「そこ、俺の席なんだけど」

 
 ただ、じっと私の座る机を見つめながらそう告げられた。


 時計を見ると終了から5分経過……周りには誰もいなくなっていた。



 「うわっすみません!!」


 
 慌てて立ち上がって席を譲る。


 ―――うわーこの人、テスト中私を睨んでた人だよー!!


 すっかり忘れていたが、もうかれこれ20分はこの席を待っていたんだろうという答えに、今さらながら気が付いた。


 私じゃなくて、どうやら机を見てたようだ。


 私に背を向け、机の中をがさごそするその背に



 「ほんと、すみませんでしたっ」


 
 と頭を下げた。


 
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