好きと言えるその日まで
 あの時だって。


 卒業式の時だって、先輩の視界には私は入ってなかった。


 だから今この状況が、嬉しくてたまらない。


 もちろん、自分が笑われてるってのは百も承知なんだけど―――


 「バカじゃ、ないもん」

 「ハハッ、ほんと、お前おかしい」


 嬉しげな顔をしながらそれでも反論すると、先輩は私をおかしいと言いながらまた笑った。


 「俺、そんなに好かれるタイプじゃないと思うけど」

 「そんなことないです! 好きでした、私ずっと!」

 「……」


 私の勢いに押されてか、先輩は黙った。

 
 だから私は一方的にそのまま捲し立てた。


 「先輩が好きなパイン飴舐めて。先輩が好きな焼きそばパン食べて。先輩の好きな野球部に入るの夢見て高校まで来たんですから!」


 勢いで言いきって、はぁはぁと息をつく。


 そんな私を目を丸めて先輩は見つめていた。


 
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