好きと言えるその日まで
 歩調の速い先輩を小走りで追いかけながら帰路を歩く。


 少し追いついてはまた離れて。


 追いついては、離れて。


 その繰り返しに息が切れ始めたころ……


 「トロくさ」

 「とろ!?」


 先輩が立ち止まって私を見た。


 「もうちょっとまともに歩けよ」
 
 「いや、先輩が早すぎなんですよ!」

 「俺は悪くない」

 「はいぃ?」


 私の妄想が美化しすぎてたんだろうか?

 
 優しいと思い込んでいたはずの先輩は、どうにもこうにも厳しい。


 けど


 「ちょっとだけ、合せてやるから普通に歩けよ」


 
 やっぱり優しい気もする。


 って、なんで一緒に帰ってくれてるんだろう……?


 そんな今さらなことに気が付いた。
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