好きと言えるその日まで
 ドキドキし過ぎて顔があげられなくて、膝上に乗せた手をグーパーしながら見つめた。


 一駅過ぎたところで、先輩がはぁ……と言ってから口を開いた。


 「俺さ、パイン飴別に好きじゃないから」

 「へ?」

 「ついでに言うと、コロッケパン派」

 「はっ!?」


 いきなり切り出された話に目が点になりながら顔を上げると、先輩は気まずそうに窓の外を見ていた。


 「お前が何をどう解釈して俺の好みがそれと思ったかしらねーけど。違うから」

 「嘘……」

 「嘘つく意味、ないだろ」
 
 「確かに」


 1年以上、先輩がそれが好きだと信じ続けてきて、それらに縋ってきた私。


 それなのにそれを全否定されてしまえば、目も当てられない。


 衝撃の事実に、私の心は崩れそうになる。
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