好きと言えるその日まで
 すぐに信号で立ち止まると、先輩はまた息を吐く。


 もう、どうしていいか分かんなくて私の頭はぐちゃぐちゃで。


 そもそも憧れ過ぎた先輩と並んで立っているこの状況だけで、パニック寸前だった。


 だって思い出したからさっき。


 電車で見上げて、先輩が外を見るその瞳が―――あの頃と同じだって。


 見た目が少し変わったけど、先輩は変わってないって。

 
 それが、嬉しくてやっぱり好きだって思っちゃったから。


 隣に立って、すごく意識した。


 だけど、ドキドキと高鳴る心臓を無視して先輩は話しかけてくる。


 「お前さ、どうしたいの?」

 「え?」

 「俺は……どうしていいか、困ってる」


 先輩のストレートな言葉に、ズキリと痛みを感じて顔を上げると信号が青になった。
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